駄目人間は今日も

鬱病を持っている駄目人間サラが吐瀉する徒然エッセイ

結婚式

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今日は部下の結婚式に出席してきた、わたしがサラです。

彼女を我が社で採用したのはわたしなので、招待していただいたんだろうと思う。

社長とともに出席、スピーチなどの地雷は最初から回避済みだった。

だからわたしは、安心して飲み食いしていれば良いだけの、気楽な祝事だった。

彼女がこんなにも美しい女性だったコトを今日の今日まで知らなかったのは、不覚だった。

背中が大きく開いたドレスがとてもよく似合っていて、なんだか涙が出そうになった。

 

わたしは彼女を何度か仕事場で泣かせたコトがある。

わたしは仕事場での涙に対して過度に寛大になったりしない。

余計に追い詰めるようなコトもしないけど、泣いたとてその場の成果が向上するわけでもない。

しかしその涙が次に良い影響を残すコトは時々ある。

今はまだ生まれたての子鹿ながら、彼女の涙がこれからの成果につながるコトを期待しているわたしだ。

 

さて人前結婚式を無事終え、わたしは食事をただただ楽しみにしていた。

メインはなんだろうか、デザートは、などと呑気な当て推量に耽る無責任の味は、わたしの大好物の一つ。

しかしこの時のわたしは、社長が新婦主賓としてスピーチをはじめた時に全身の毛穴がガバガバに開ききり全身汗まみれとなる未来をまだ、知らなかったのである。

社長が全然まともなスピーチをしてくれないのだ。

昨晩遅くまでかかって、彼のスピーチ原稿を書いていたわたしの努力は泡と消え、いわゆるグダグダの喋りが十数分に渡って展開されたのである。

 

あんたそれ、平日の会社の会話じゃん。

 

この数分の間、その場から逃げ出したい気分にまみれながら、ただただ目を閉じ時間が過ぎるのを待つしかなかった。

吹き出す汗、早まる鼓動、荒れる息。

社長はお調子者ながら、いわゆるオフィシャルな場面に滅法弱いという性質を持っているなんとも面倒臭い男だったのを、すっかり忘れていた。

そういえば披露宴が近づくにつれて無口になっていた、そうだったそうだった。

彼は見かけによらずアガリ症なのだ。

彼のスピーチが始まったその瞬間に全てをわたしは思い出した。

 

これ、あかんやつや。

 

そう感じた時にはとっくに手遅れだった、そりゃそうだ。

なぜわたしは彼のスピーチを阻止するか、それとも完全にプロデュースしなかったのだろうか。

わたしは彼のつまらないギャグにまみれたスピーチを聴いている間、夢なら覚めてと何度も心の中でつぶやいていた。

半分気を失いそうになる。

意識が遠のく中、なんとか社長のスピーチは終わった。

わたしはしたたるほどに汗をかいていた。

一歩も動かずじっとしているだけでこんなにも疲労感を感じたのは、生まれてこのかた初めての経験だった。

 

スピーチを終えた社長は、なんだか一回り身体が小さくなったように見えた。

本人も、やらかしてしまったコトを認識していたんだろうと思う。

腑抜けのようになっている社長に声をかけるも、このお肉美味しそうですね、などとスピーチとは無関係の話題しか振れない自分が更に恨めしい。

全てのプログラムが終了する頃には社長も気分を取り直していたようで、なんだかホッとした。

息子がいたとしたら、発表会の当日はこんな気分になるのだろうか、だとしたらわたしは息子はいらないなと感じてしまった。

いや、社長を息子に例えるのは失礼というものだろう、息子に対して。

 

わたしは祝福しにいったのか、精神修行をしにいったのか。

いずれにしても、若い部下の門出を多くの人々と共に祝福できたコトだけでも、今日を生きた甲斐があったというものだ。